紙垂(しで)とは?形の意味と語源、吉田流・白川流・伊勢流の違いについて解説

紙垂とは 意味 由来 起源 語源 種類 宗教用語 参拝マナー

神社の鳥居やしめ縄に下がっている、白いギザギザした紙。
名前は知らなくても、初詣やお宮参りで必ず目にしているはずです。

この紙は「紙垂(しで)」と呼ばれ、そこが神様のいる神聖な場所であることを示す印としての役割を持っています。

本記事では、紙垂の意味と役割、なぜあの独特なギザギザの形をしているのかという理由、そして吉田流・白川流・伊勢流という3つの流派の違いまで、分かりやすく解説します。

執筆・監修
神社のお焚き上げ編集部
郵送お焚き上げサービス「神社のお焚き上げ」(提携神社:祐徳稲荷神社)の運営を通じて得た知見と現地確認・独自調査を元に、企画・執筆・編集を行っています。

​この記事の結論
✓紙垂(しで)とは、神域と俗世を分ける境界の印として垂らす白い紙
✓あのギザギザは雷・稲妻をかたどった形。邪気を祓い豊作を願う意味がある
✓裁ち方・折り方には吉田流・白川流・伊勢流の3つの流派がある

紙垂(しで)とは?意味と役割

紙垂とは 意味

紙垂とは、和紙に切り込みを入れ、交互に折り曲げて垂らした紙のことです。

「しで」と読み、「垂」「四手」「四垂」「四出」と表記されることもあります。
語源は「しだれる(垂れる)」で、文字どおり垂れ下がっている様子がそのまま名前になりました。

紙垂の役割は、そこが清浄で神聖な場所であることを示すことです。

しめ縄が神域と俗世を隔てる「境界線」だとすれば、紙垂はその境界を目に見える形で示す「標識」にあたります。しめ縄と紙垂がセットになって、はじめて結界としての意味を持つのです。

また、紙垂は単独でも神聖さを示す印として機能します。
鳥居に直接取り付けられていたり、地鎮祭で四方に立てる青竹(斎竹)に下げられていたりするのはそのためです。

 

紙垂が使われている場所

紙垂は、神社の境内だけでなく、思いのほか身近な場所で使われています。

しめ縄・しめ飾り 神社の社殿やご神木、家庭の神棚や玄関に
鳥居 しめ縄とともに、あるいは単独で
玉串(たまぐし) 神前に捧げる榊の枝に付けて
祓串・大麻(おおぬさ) お祓いの際に神主が振る棒
御幣(ごへい) 木や竹の串に紙垂を挟んだ神具
地鎮祭の斎竹(いみだけ) 敷地の四隅に立てる青竹に
相撲の土俵・横綱の綱 相撲はもともと神事だったため

 

紙垂と御幣・玉串の違い

御幣 玉串 紙垂

紙垂とよく混同されるのが、御幣(ごへい)や玉串(たまぐし)です。これらはいずれも「紙垂を使った神具」であり、紙垂はその共通パーツにあたります。

名称 どんなもの 役割
紙垂(しで) 切り込みを入れて折った紙そのもの 清浄で神聖な空間であることを示す印
御幣(ごへい) 2本の紙垂を木や竹の幣串に挟んだもの 神様への捧げ物、神様が宿る依り代
玉串(たまぐし) 榊の枝に紙垂や木綿を付けたもの 参拝者が神前に捧げる供物
祓串・大麻 棒の先に紙垂を多数取り付けたもの お祓いの際に左右に振って穢れを祓う

ごく単純にいえば、紙垂を串に取り付けると御幣になり、榊に取り付けると玉串になるということです。

紙垂そのものは「場を示す印」であり、御幣や玉串は「神事に用いる道具」だと整理すると分かりやすいでしょう。

 

紙垂のジグザグの形にはどんな意味がある?

紙垂のあの独特な階段状の形は、雷(かみなり)や稲妻をかたどったものだと言われています。

雷の語源は「神鳴り」。
古来の日本では、雷は神が鳴らす音、稲妻はその光と考えられ、邪悪なものを追い払う力を持つと信じられてきました。

さらに雷は、豊作とも深く結び付けられてきました。

米の収穫期にあたる9月から10月にかけては雷が多く発生します。
そのため「雷が多い年は稲がよく実る」と考えられ、稲を実らせる存在として「稲の妻(つま=配偶者)」と書いて「稲妻」と呼ばれるようになったのです。

稲妻が秋の季語とされているのも、この結び付きによります。

つまり紙垂は、邪気を祓い、豊作をもたらす縁起の良い雷の形を紙で写し取ったもの。その形自体が、清浄で神聖な場であることを表しているのです。

※紙垂の形の由来には諸説あり、雷を模したという説のほか、「神様が降りてくる階段を表している」「布を垂らした古い形が簡略化されたもの」とする考え方もあります。

 

紙垂の起源・由来

紙垂が書物に登場する最古の記録は、『古事記』の天岩戸(あまのいわと)神話だとされています。

天照大御神(あまてらすおおみかみ)が岩屋にお隠れになったとき、神々はお出ましいただくために岩戸の前で祭りを行いました。

その際、榊(さかき)の枝に白い布「白丹寸手(しろにぎて)」と青い麻布「青丹寸手(あおにぎて)」を垂れかけたという記述があり、これが紙垂の原型と考えられています。

当初は紙ではなく布だったものが、時代とともに入手しやすい紙へと置き換わり、現在の紙垂になったというわけです。

しめ縄の由来と天岩戸神話については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

紙垂の種類|吉田流・白川流・伊勢流の違い

紙垂の作り方には複数の流派があり、代表的なものが吉田流・白川流・伊勢流の3つです。

一見どれも同じように見えますが、紙の裁ち方と折り方が異なります。

流派 裁ち方 折り方 見た目の特徴
吉田流 紙幅の3分の2の深さで切れ目を入れる すべて手前側へ折り倒す 最も広く使われている。段が一方向にそろう
白川流 吉田流と同じ 手前→奥→手前と前後交互に折る 折りが互い違いになり、立体的に見える
伊勢流 上記2流派とは裁ち方そのものが異なる 裁ち方に応じた独自の折り方 2流派とは明らかに違う形をしている

吉田流と白川流は切り方が同じで折り方だけが違うのに対し、伊勢流は裁ち方から異なるため、見た目にもはっきりとした差があります。

どの流派を用いるかは、地域や宗派によって考え方が異なります。

神社ごとに決まっている場合もあれば、主祭神や神事の用途、境内の内と外で使い分けている場合もあり、「これが正解」という全国共通の決まりはありません。

ご自宅の神棚やお正月飾りに用いる場合は、最も一般的な吉田流を選んでおけば問題ないでしょう。より丁寧にしたい場合は、お参りしている氏神神社の紙垂に倣うのがおすすめです。

 

紙垂の枚数(四垂・二垂・八垂)

紙垂の枚数や大きさも、神社や地域によってさまざまです。

神棚や玄関に飾るしめ縄に付ける場合は、「四垂(よんたれ)」=4枚が一般的ですが、地域によっては「二垂」「八垂」とすることもあります。

少し意外なところでは、相撲の横綱にも紙垂が付いています。

今では国民的スポーツとなった相撲も、かつては物事を決するための神事として行われていました。力士の最高位である「横綱」という名称は、横綱だけが腰に締めることを許された白麻製のしめ縄「横綱」に由来しており、この綱に下げる紙垂は「五垂」=5枚と決められています。

 

紙垂の素材(木綿・和紙・奉書紙)

日本では古くから、神様へのお供えものである幣帛(へいはく)として、木棉(ゆう)・麻・絹などが用いられてきました。

木棉を紙垂にして榊に付けた「木綿垂(ゆうしで)」は、現在でも伊勢神宮の式年遷宮など一部の神事で使われています。

木棉とは、楮(こうぞ=和紙の原料となる植物)の繊維で織った布や紙のこと。
比較的手に入れやすかったことから榊や串にくくり付けて使われるようになり、やがて和紙へと移り変わっていきました。

現在は、奉書紙・美濃和紙・半紙といった和紙が多く使われています。

ただし和紙は水に弱いため、屋外に飾る場合はプラスチックコーティングされた紙やコピー用紙を用いる神社もあります。

 

紙垂に関するよくある質問

吉田流・白川流・伊勢流のどれを選べばいいですか?

明確な決まりはないため、最も一般的な吉田流で問題ありません。

より丁寧にしたい場合は、お参りしている氏神神社の紙垂に倣うとよいでしょう。

紙垂はどこで買えますか?

神社の授与所のほか、神具店、ホームセンター、通販サイトなどで購入できます。

半紙や奉書紙、白いコピー用紙を使って手作りすることも可能です。

紙垂に表と裏はありますか?

紙垂には表裏があります。

境界を示す役目があることから、外側(現世側)を表にするのが一般的ですが、神様がいる側に表を向けるという考え方もあり、神社によって異なります。