毎年11月〜12月頃にかけて、日本全国の神社・お寺で行われる「お火焚き神事」。
お火焚きは、寺社の境内で護摩木や古札などを火に焚べ、厄除け・祈願成就などを祈願する儀式です。
寺社によって儀式の内容は異なり、参拝者に甘酒やお菓子が振る舞われるなど、地域によって様々な特色があります。
本記事では、お火焚きの由来と意味、儀式の内容、全国の有名なお火焚き祭をご紹介します。
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「お火焚き」とは?
お火焚きとは、例年11月〜12月に行われる火祭りの一つです。
秋の農作物の収穫に感謝し、護摩によるお祓いやお清めを行い、厄除けや満願成就を祈願します。
京都では馴染みのある伝統行事で、大阪や滋賀、佐賀などでも行われています。
お火焚き神事の内容は神社・お寺により異なりますが、願いを書き入れた護摩木(火焚串)などを供養する点はほぼ共通しています。
護摩木をお焚き上げする炎とともに天へ向かって煙が立ち上る様子は圧巻です。
当日は神楽や雅楽の奉納、参拝者に焼き芋やうどん・甘酒などが振る舞われるところもあります。
お火焚きの由来
お火焚きの由来は諸説ありますが、その一つとして考えられているのが、平安時代の宮中行事「新嘗祭(にいなめさい)」です。
新嘗祭とは、新しい穀物を神に感謝し収穫を祝う祭りで、農耕の神である大歳神に感謝し、その年初めて収穫されるお米や五穀などを捧げて新穀をいただくという神事です。
また、お火焚きは江戸時代に始まった「鞴祭り(ふいごまつり)」と繋がりがあるという説もあります。
鞴祭りとは、鍛冶屋や鋳物師など鞴を使う職人が、商売の神・稲荷神や鉄・火の神である金屋子神への感謝を込めて鞴を清め、お祝いする祭りです。
京都市の伏見稲荷大社で行われる「火焚祭」は日本全国のお火焚きのなかでも特に有名ですが、祀っている稲荷神が鍛冶の守護神であることから、鞴祭りと繋がりがあると考えられています。
お火焚きで行われること
お火焚き神事の内容は地域や寺社により異なりますが、
- 本殿での儀式
- お火焚き
- 神楽奉納
は、ほぼ全ての寺社に共通して行われています。
本殿での儀式では、祝詞の奏上やお祓いなどを行い、参拝者が願いを書き入れて奉納した護摩木を焚き上げて祈りを捧げます。
寺社によっては、参拝者から境内の古札納所に納められた古いお守り・御札、熊手・だるま・神棚などを一緒にお焚き上げする場合もあります。
寺社によっては、この後一年間の無事と収穫への感謝を込めて神楽奉納が行われたり、参拝者に新米でつくられた甘酒やおかゆを振る舞うところもあります。
お火焚きに関連した食べもの
お火焚きまんじゅう
お火焚きまんじゅうとは、お火焚きの際に1年の無事を感謝し供えられるまんじゅうです。
紅白のふかしまんじゅうに3連の火炎紋の焼印が押されているのが特徴で、中にはほどよく塩味がきいた餡が入っています。
京都ではお火焚きの時期になるとお餅屋さんや和菓子屋さんの店頭に並びます。
お火焚きの前後に厄除けや招福、火の用心の思いを込めていただきます。何とも言えない素朴な味わいです。
三角おこし
「火をおこす」にちなんで名づけられた三角おこしは、お火焚きで振る舞われる伝統的なお菓子のうちの一つで、その年に収穫した新米を使用しています。
赤や白の三角形をしており、火の形を表していると考えられています。
地域の特産品や季節の食材を使用している場合も多く、地域特有の文化や風習を感じられるお菓子として食べることも多いのだとか。
その土地ならではの味わいを楽しめるお菓子として人気です。
みかん
みかんは、お火焚きにおいて豊穣や幸運を象徴する神聖なものとして扱われています。
お火焚きの残り火で焼く地域も少なくありません。
お火焚きの火で焼いたみかんを食べたり、皮を煎じて飲んだりすると無病息災が叶い、一年中風邪をひかないといわれています。
全国の主な「火焚祭(お火焚き祭)」
ここからは、全国の主な火焚祭(お火焚き祭)をご紹介します。
京都府内の火焚祭は↓の記事をご覧ください。
祐徳稲荷神社「秋季大祭 お火たき」|佐賀県
京都の伏見稲荷大社、茨木の笠間稲荷神社とともに「日本三大稲荷」の一つに数えられる祐徳稲荷神社は、衣食住の守護神として崇拝されています。
商売繁盛、家庭繁栄、大漁満足、交通安全など様々なご利益があり、全国からの参拝者で一年中賑わっています。
祐徳稲荷神社では秋季大祭の「お火焚き」が、毎年12月8日に新嘗祭の夜の神事として、日没から夜にかけて開催されています。
宮司の祝詞の後に御神前の浄火が松明に移され、大小の木々を積み重ねて青竹で囲んだ「お山」に点火されます。
お山が一気に燃え上がると参拝者から大きな歓声が上がり、その迫力は見ごたえ十分です。
境内の参集殿では、鹿島市内の主要特産品や土産物などを展示即売する「鹿島市特産品まつり」も開催されます。
開催日時 | 毎年12月8日 20時頃点火 |
受付方法/日時 | お問い合わせください |
供養料 | お問い合わせください |
注意点 | お問い合わせください |
祐徳稲荷神社「秋季大祭 お火たき」
住所:〒849-1321 佐賀県鹿島市古枝乙1855
公式HP:https://www.yutokusan.jp/
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祐徳稲荷神社では、年に一度開催される「お火たき」とは別に、通年で郵送でのお焚き上げを受け付けています。
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武雄神社「お火たき祭」|佐賀県
武雄神社は、樹齢三千年のご神木を祀り、縁結びスポットの夫婦檜や大楠などで知られている神社です。武雄の氏神社でもあり地元では篤く信仰されています。
お火たき祭では、本殿での祭典後、御神前にて火鑚の儀が行われ神職が大祓詞を奏上します。
参拝者が持ち寄った古い神札や御守は御神火によって焼納され、罪穢れを祓い一年間平穏無事に過ごせたことへの感謝と共に、来る年の幸せを祈念する厳粛な神事です。
開催日時 | 毎年12月5日 午後7時30分 |
受付方法/日時 | お問い合わせください |
供養料 | お問い合わせください |
注意点 | お問い合わせください |
武雄神社「お火たき祭」
住所:〒843-0022 佐賀県武雄市武雄町大字武雄5335
公式HP:https://takeo-jinjya.jp/
太郎坊宮「お火焚大祭」|滋賀県
太郎坊宮は、伊勢神宮の天照大神の第一皇子神・正哉吾勝勝速日天忍穂耳大神を祀る神社です。神宿る霊山・赤神山に鎮座し、聖徳太子や最澄、源義経などが参拝したとされ、ご祭神のお名前に速やかに勝利を得る意味が込められていることから、プロスポーツ選手をはじめ経営者や政治家などさまざまな業種の参拝者が訪れます。
太郎坊宮のお火焚き大祭では、全国から納められた護摩木が焚き上げられ、諸悪を払い、心身を清浄し、願事成就のために祈りが捧げられます。全国屈指の規模を誇る神道護摩と言われるだけあってその様子は迫力満点です。
開催日時 | 毎年12月第1日曜 |
受付方法/日時 | お問い合わせください |
供養料 | お問い合わせください |
注意点 | お問い合わせください |
太郎坊宮「お火焚大祭」
住所:〒527-0091 滋賀県東近江市小脇町2247
公式HP:http://www.tarobo.sakura.ne.jp/index.html
最上稲荷「お火たき大祭」|岡山県
最上稲荷は、仏教の影響を受ける貴重な稲荷として有名です。そのため、お寺ながら鳥居や神宮形式の本殿(霊光殿)を有しており、神仏習合時代の特徴が見られるといった独自の文化を持つ貴重な稲荷です。
最上稲荷の三大祭典のひとつであるお火たき大祭では、成就したお札の山を毎年12月30日夜の点火式から1月7日夕方にかけてお焚き上げします。お焚き上げの炎に体や手をかざすと一年間無病息災で過ごせる、炎にかざした火難除札を台所に貼ると火事の災難から免れられるといった言い伝えがあることから、集まった参拝者はお焚き上げの炎に向かい真摯に祈りを捧げます。
開催日時 | 点火式:毎年11月30日 午後5時30分 鎮火式:毎年12月7日 午後3時 |
受付方法/日時 | 当日持参もしくは郵送 |
供養料 | 奉納料200円以上 郵送の場合3,000円以上 |
注意点 | 当山で授与されたお札・お守りのみ持参可 |
最上稲荷「お火たき大祭」
住所:〒701-1331 岡山県岡山市北区高松稲荷712
公式HP:https://inari.ne.jp/
広済寺「お火焚き祭り」|兵庫県
妙見宮を祀る広済寺は、近松門左衛門の菩提寺としても知られる寺院です。
長らく戦災で荒れ果てた状態が続いていましたが、近松門左衛門の協力により再興されたと伝えられています。
「お火焚き祭り」では、加持祈祷の後に一年間安置されていた護摩木が焚かれ、祈願成就を祈ります。
炎の中で焼かれたみかんを食べ、護摩供養の焚き火にあたると風邪を引かないというご利益は有名です。
開催日時 | 毎年12月9日 午後7時 |
受付方法/日時 | お問い合わせください |
供養料 | お問い合わせください |
注意点 | お問い合わせください |
広済寺「お火焚き祭り」
住所:〒661-0977 兵庫県尼崎市久々知1₋3₋27
公式HP:https://kosaiji.org/wp/
春日神社「御火焚祭」|奈良県
丹波篠山の中心市街地に位置する春日神社は、奈良の春日大社から分霊を迎え、日置の庄や黒岡の氏神として鎮座したのち、篠山城の建設のため現在の場所に奉遷された歴史ある神社です。
国の重要文化財である能舞台や市指定文化財の黒神馬などが展示された絵馬殿が有名で、地元では「おかすがさん」と呼ばれ親しまれています。
「御火焚祭」では、4つの釜で沸かしたお湯が入った桶を神殿前に奉納し、神事が執り行われます。
一年の間に持ち込まれた古い神棚やお札を地元の人たちがお焚き上げするという地域の伝統行事としての側面が大きい祭事です。
開催日時 | 毎年12月9日 午後2時 |
受付方法/日時 | お問い合わせください |
供養料 | お問い合わせください |
注意点 | お問い合わせください |
春日神社「御火焚祭」
住所:〒669-2321 兵庫県丹波篠山市黒岡75
公式HP:https://kasuga.tanba-sasayama.net/
蟻通神社「お火焚き祭」|大阪府
蟻通神社は、大阪府泉佐野市長滝に鎮座し、大国主命と智恵と孝行の神・蟻通明神を主祭神とする氏神鎮守社です。
戦時中の飛行場建設に伴い、現在の場所に移転しましたが、かつての境内は熊野街道沿いに広がっており、紀貫之の物語など多くの故事伝承で知られています。
広大な社域と長い参道には美しい松並木が続き、古社として名高いです。
ゆかりのある故事を調べてから訪れると、より一層楽しいでしょう。
開催日時 | 毎年11月3日 午後1~4時 |
受付方法/日時 | お問い合わせください |
供養料 | 護摩木:初穂料200円 神棚:初穂料は任意の金額 |
注意点 |
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蟻通神社「お火焚き祭」
住所:〒598-0034 大阪府泉佐野市長滝814
公式HP:http://www.aritooshi.org/index.cgi
年の瀬はお火焚き神事に参加して、来年の無病息災を祈ろう
今回は、お火焚き神事の由来と全国のお火焚き祭をご紹介しました。
地域の伝統行事に参加することで、新しい魅力を発見するきっかけになるかも。
ぜひ皆さんも近くのお火焚き祭に参加して、来年の無病息災や祈願成就をお祈りしてみてください。
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